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橋爪功「河童(芥川龍之介)」

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橋爪功「河童(芥川龍之介)」

何度でも行きたくなる

まずはご賞味ください。冒頭です。

ビュッフェは値がはるほどそれぞれの料理の個性が豊かで、そして、それぞれがきちんとおいしい。
一方、満腹中枢を満たすためだけのビュッフェは、品数が少なく、かつ、すべてがなんとなく似たような味付けがするものである。

とあるお気に入りのビュッフェでは、料理ももちろんシャーベットも数多くあり、頼めばフルーツまで添えてくれる。

作品との出会い(なぜこの作品なのか、惹きつける、感じたこと)

新潮CDはとても好きなシリーズで、有名どころだと森繁久彌、江守徹、市原悦子などそうそうたる面々が、珠玉の朗読を披露している。
その作品は、新潮CDのひとつ。芥川龍之介はもちろん知っているが、橋爪功というと「ハテ?この人は朗読もするのだろうか」という気持ちで手に取った。

聞く前の想像

私のイメージは、脇役としてよくテレビにでている人。(本来の人格はわからんけれども)なんかずるがしこい感じて演じていた役に関してはあまり覚えていない。

作品の概要

この「河童」という作品は「羅生門」「鼻」「杜子春」などと比較すればメジャーではないと思うけれども、晩年の名作だそうである。そして結果、この作品を橋爪功に読ませた発案者には敬意を表したい。精神病棟にいる若者が、河童の世界にいったときの話を(妄想として)語っていくのが話の中心となっている。

心地よい不気味さ

「河童」という架空の生きものの生態が作品要素のたいはんであるから、作品としてはファンタジーである。ファンタジーというと、欧米では「ハリーポッター」とか、「ロードオブザリング」とか、壮大でかつハレ(明るい)作品が多いように思う。
しかし、わが国のファンタジーといえば、やはり妖怪。そしてそこにはどれだけ明るくふるまっていてもジメジメとしたカゲ(陰気)は避けて通れないのである。

そのカゲの部分に、橋爪功の声がベストマッチなのである。
常にねっとりとまとわりつくような感じがある。しかし不思議と不快感はない。なんだろう、春うららかな陽気のなかで田んぼの泥に足を踏み入れ、指の隙間から泥が入り込んでくる感じに似ている。

声の多様性

さまざまな声色を使い分ける人、ということで多くの人が思い浮かぶのが声優の山寺宏一さんではないでしょうか。この画像は有名ですよね。最高一人50役なんてこともあったらしいです。

山寺さんの場合、音としてさまざまな表現をできることもあり、そのような人間離れした技を可能にしているのだと思います。

が、橋爪功も、使い分けという意味では見事というほかありません。この「河童」という作品には、一言だけ発する役も含めると、30ほどの人格(カッパ格)が登場します。

もちろん朗読ですから、それを裏付けるための画像はありません。ただ行間からその人物(カッパ格)を想像して演じ分けるわけなのですが、そこが破綻せず表現されています。

声にある説得力

なぜ説得力があると感じるのか?

間のとりかた

文章には「、(テン)」と「。(マル)」。段落の変更などがある。
しかし、朗読の「間」はそれにとどまらない。この人の間、まったくの空白ではない。なんだろう必要な効果音が脳内で保管されるような感じなのである。

水墨画は、白と黒だけで万物の色を表現する。
この人は、声を出すタイミングとスピードだけですべてを表現してしまうのである。

河童との出会い.mp3

たとえは面白いだけではなく、意味のあるものを。

結論

朗読の高級ビュッフェをぜひご賞味あれ。

朗読者プロフィール(Wikipediaから)

朗読された作品の概要(新潮CD公式サイトから)

河童の国の不思議な社会制度や芸術、宗教観を通して人間社会を鋭く諷刺した、芥川の最晩年の代表的作品。

 

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