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朗読:江守徹/小僧の神様(志賀直哉)

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朗読:江守徹/小僧の神様(志賀直哉)

小説の神様が書いた『小僧の神様』

紅白歌合戦に、演歌歌手が出場しなくなったら、それは紅白歌合戦といえるのでしょうか?

どうも、朗読モンキーです。

今日は新潮CDシリーズから『小僧の神様』をご紹介します。小説の神様とたたえられた志賀直哉の最高傑作のひとつです。

名作中の名作ほど、いつか読めると思ってなかなか読まない

10年ほど前に「『小僧の神様』は一度は読んだほうがいい」と言われたことがありましたが、その当時は仕事が忙しく時間をとることができませんでした。その後、そんな言葉すら忘れていましたが、最近、図書館でふとこのCDを見つけ、聴いてみることにしたのです。

本命じゃなかったのに

朗読は江守徹さん。この名前を耳にして思い浮かぶイメージは、年代によってずいぶん違うかもしれません。

50代以上なら押しも押されもせぬ大俳優。40代以下ならゆかいなおじさん。まったく異なるイメージですが、幅広い世代から愛されていることは事実です。そのどちらのイメージにもないのですが、その魅力的な声で、ナレーションでも活躍されています。

私は活躍されていることは知っていたけれども、このCDは「江守徹」めあてではなく、「小僧の神様」めあてだったのです。でも、聴いてみると、朗読表現の豊かさに圧倒されました。

ここを聴いてほしい

この朗読作品で、私がオススメするポイントは3つ。

  1. 場面の切り替え
  2. 職業の違いによるテンポの変化
  3. Aの細君のかわいらしさ

◆場面の切り替え

Amazonのレビューでは「聴きやすさもさることながら表現力も抜群」とあります。たしかにそのとおり。されど、新潮社のCDはどれをとってもレベルが高く、「聴きやすさ」も「表現力」も抜群な猛者ばかりなのです。

そんな新潮CDのなかでも「これは!」とうなったのは「場面転換の読み方」。

この作品は朗読時間20分程度の短編なのですが、ひとところで話が進むわけではなく、場所も時間も、そして設定さへも超えて「場面」が転換します。おそらくこれだけ短い作品のなかで、しかも一人の朗読で、ふつうであれば、なかなか切り替えが難しいんじゃないでしょうか?

長編であれば、情景の描写が入ったりするので、聴き進めていくうちにどんな場面か理解が進むのですが短編ではそうはいきません。

切り替えのシーンにわずかに力をこめ調子を変えることで、「場面転換」を見事に表現していきます。そうすることで、聴くほうは混乱なく作品に没頭できるのです。

◆職業の違いによるテンポ

一人でやる朗読は「読み分け」が、その作品の魅力を活かしも殺しもします。この作品は冒頭で小僧の奉公先の番頭の会話と、貴族院議員の会話がありますが、そこも絶妙にテンポを変化させることで庶民と貴族の生活の雰囲気を言外に匂わせています。

これがまたうまい。せかせかと会話する番頭たちの背後には街の雑踏の音が、すこしだけゆったりと会話する議員たちの背後にはせわしくない邸宅内の静けさがただよっているようです。

これは、私が聴いての勝手な感想なのですが、正直、考えてやっているというより、長年の経験から生み出される神がかったテンポ調整としか思えません。

◆Aの細君

江守さんの朗読に登場する女役、好きなんですよね。

もともとご本人はドスの聞いた声なので、作品に登場したての女性は、ちょっと気持ち悪い(ごめんなさい)。でも、聴き進めていくと、その気持ち悪さがきえるどころか、愛らしさすら漂わせてくる。

この細君は、ちょっととぼけたところがあって、Aの気持ちをあまり斟酌せず、とにかくお寿司を食べたいみたいなんですけど、それがまた、いかにも世間知らずで育ったお嬢さんのようでなんだか可愛らしくなってくるんです。これは「江守マジック」のひとつといえるでしょう。

こんな人に聴いてほしい

できれば万人に聴いてほしい作品ですが、しいてあげるとこんな人に合うんじゃないかと思います。

  • 面白い以外の「江守徹」に興味がある
  • 小説の神様が書いた神様の小説を聴いてみたい
  • プレゼンなどで話す機会がありテンポの変え方を学びたいビジネスパーソン

演歌のような安定感

朗読界の大御所のひとりである江守徹さん。聴いて損はありません。それはまるで日本人の心にしみ込んでいる演歌のようでもあります。どこかなつかしさを感じ、さりとて決して古くはない。いつ聴いても心を震わせてくれる作品のひとつです。

作品の仕様

  • 形態:CD
  • 長さ:76分 ※「小僧の神様」は20分くらいです。
  • 発売年:2002年
  • 発売元:新潮社

朗読者経歴

江守 徹
(えもり とおる、1944年1月25日 - )は、日本の俳優、タレント、ナレーター、劇作家、演出家、翻訳家。本名、加藤 徹夫(かとう てつお)。文学座代表。身長171cm、体重75kg。血液型はA型。芸名の由来は、フランスの俳優・劇作家モリエールから。(Wikipediaから引用)

作者経歴

志賀 直哉
(しが なおや、1883年(明治16年)2月20日 - 1971年(昭和46年)10月21日)は、明治から昭和にかけて活躍した日本の小説家。白樺派を代表する小説家のひとり。「小説の神様」と称せられ多くの日本人作家に影響を与えた。代表作に「暗夜行路」「和解」「小僧の神様」「城の崎にて」など。宮城県石巻生まれ、東京府育ち。(Wikipediaから引用)

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