語彙力が足りないと感じてませんか
いい言葉がでてこなくて困ったことはありませんか?
どうも、朗読モンキーです。
今日は、新潮CDから、昭和文学の金字塔「楢山節考」をご紹介します。

作品との出会いはひょんなことから

朗読にはまり始めた頃、図書館で借りられるCDは片っ端から借りて聴いていました。作品も朗読者のこともよく知らなくても。
なかでも新潮CDシリーズは、テレビなどで活躍されていてなじみ深い人たちもたくさん朗読しているので、とても親しみやすいシリーズのひとつです。作品もとても厳選されているという印象です。
しかし、無知というのは怖いもの。私は「楢山節考」も「深沢七郎」も、そして「小沢昭一」すら知りませんでした。小沢昭一さんは、家にかえって調べて「あ、この人なんかテレビで見たことあるな」くらいの存在でした。
出会えてよかった

朝の連続テレビ小説って、たいてい地方が舞台ですよね。そして、そこでは当然のごとく方言による会話が繰り広げられます。不思議なもので、まったく知らない方言であっても「この人は上手だな」とか、「この人はなんだか不自然だな」と感じるものです。
「小沢昭一さんって人は、この地方のご出身なんだろうな」と思うほど、自然で豊かな方言使いをされています。それを聞くだけでも一聴の価値ありです。
ここを聴いてほしい
- 方言のもつ表現力を味わう
- 独特の節まわしは、まるでミュージカル
- たどたどしいようで、そうでない
【ポイント】1. 方言のもつ表現力を味わう

この朗読の作品の魅力は言葉では語りつくせません。というとこのブログの意味がなくなってしまうので、作品のポイントをご紹介してみようと思います。
ひとつめは「方言の表現力」。私は方言の色が強い地方の出身です。地元にいるころは方言は方言ではなく、ただの言葉なのですが、それが都会にでてくると、方言の表現力の豊かさに気づくことがあります。
一説には、エスキモーは雪を表す言葉が20以上あるそうです。エスキモーが雪をみて、これはこの雪という表現をしたくても、日本語にはそれを受容できる言葉がない可能性も大いにあるわけです。
これは国内の方言と標準語の関係でも一緒です。私もいくつかの言葉をうまく標準語に置換できずに苦労したことがあります。方言はただ言葉が違ったり発音が違ったりするだけではなく、その背後にある豊かな文化をふくんだ氷山の一角ととらえることができるでしょう。
そこでこの作品です。ほんとうにすばらしい。方言の魅力を最大限にいかしつつ、適切に解説もくわわっているため、まるで心のふるさとに来たような心地よさを感じながら作品を鑑賞できます。
【ポイント】2. 独特の節まわしは、まるでミュージカル

楢山「節」考というように、この作品には多くの「節」が登場します。もちろんもと作品には音符がついていないのだと思うのですが、それが本当に見事です。物語のなかで育った人物がとびでてきて歌っているようです。こういう作品はどなたかが歌唱指導などをするのでしょうか……。
これはミュージカル作品といっても過言ではありません。この作品は何度か映画化されているようなのですが、その映画のなかでも同じような節回しなのか気になるところです。今度見てみようかしら。きっとラストシーンでは、号泣してしまうと思います。
【ポイント】3.たどたどしいようで、そうでない

朗読のポイント、ということでいうと小沢さんの朗読は、さいしょ少したどたどしいような感じがします。聴き進めていくと、そのたどたどしさが、のちのクライマックスを盛り上げるためのゆったりとした導入であることに気づきます。
どうしてもお年を召したかたの朗読の出だしは、最近の声優の声などを聴きなれている人からするとまどろっこしいように聴こえます。しかしじつはそれでさえも、布石であることが多いのです。作品自体はもちろん後半にむかって盛り上がることが多いのですが、声でもそれを表現しているわけです。
こんな人は聴いてみてほしい
【向いているポイントを2~3点】
- 地方から上京して、方言をひた隠しにしている人
- ミュージカル好きの人
言葉はもっと自由でいい
年齢を重ねたり、社会的な地位がついてくるとしっかりした言葉遣いをしないとという気持ち、というか縛りがでてきます。
言葉を相手に情報を伝えるための道具として使う場合はもちろんそうでしょう。しかし自分なりに表現するという言葉の使い方もあるはずです。若者の言葉遣いに眉間にしわを寄せて批判するだけではなく、自分もつねに言葉に自由でありたい、そう思わせてくれる作品でした。
ない言葉はつくっちゃえばいい。そしてそれが文化になっていく。
作品の仕様
- 形態:CD
- 長さ:-
- 発売年:2009年
- 発売元:新潮社
朗読者経歴
小沢 昭一(おざわ しょういち、本名:小澤 昭一(読み同じ)、1929年(昭和4年)4月6日 - 2012年(平成24年)12月10日)は、日本の俳優、タレント、俳人、エッセイスト、芸能研究者、元放送大学客員教授。日本新劇俳優協会会長。俳号は小沢 変哲。劇団「しゃぼん玉座」主宰。見世物学会顧問。
著者経歴
深沢七郎 フカサワ・シチロウ
(1914-1987)山梨県石和町生れ。少年時代からギター演奏に熱中し、戦時中17回のリサイタルを開く。戦後、日劇ミュージック・ホールに出演したりしていたが、1956(昭和31)年『楢山節考』で、第1回中央公論新人賞を受賞し作家生活に入る。『東北の神武たち』『笛吹川』などを発表するが、1960年の『風流夢譚』がテロ事件を誘発し、放浪生活に。埼玉県菖蒲町でラブミー農場を営んだり、今川焼きの店を開いたりしながら『甲州子守唄』『庶民烈伝』などを創作、1979年『みちのくの人形たち』で谷崎潤一郎賞を受賞。